雄大な那須高原をキャンバスにして、思い描くリゾートライフやセカンドライフ、田舎暮らしの夢は人それぞれ違います。別荘として家族や友人と過ごす週末リゾート、晴耕雨読の自給自足、無農薬野菜や有機野菜栽培、喫茶店やレストラン経営、趣味を生かした工房、アトリエオーナー。のんびり釣り三昧、秘湯巡りなど、既に那須高原で夢を描き始めた方々の那須暮らしをご紹介いたします。
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『イラストレーターの妻がユニークな建物を設計』
林久雄さん、芳子さんご夫妻
周囲にリンゴ畑が広がる「五峰苑」別荘地に、この4月、オレンジ色とこげ茶色のツートンカラーの建物が完成した。2つある正面玄関のドアも2色。窓枠をこげ茶で縁取るなど、独特の色使いだ。内部に入ると、やはり普通の家と違う。細長い窓から陽が注ぐ通路の先に約16畳のリビング。2階部分は吹き抜けになっており、太いムク材が組まれている。ぐるっと回ってもう1つの玄関先にある部屋に入ると、ここにも大きな吹き抜けと約6畳のギャラリーがあった。1階はほかに約5畳半の仕事部屋があるのみ。寝室、客間、クロゼット、浴室がある2階の生活空間とは、はっきり区別されている。このユニークな建物、実はイラストレーターの妻・芳子さんの平面図とパースをもとに建てられたものなのだ。
「方眼紙の升目を900mm単位にして図面を描きました。実際には1間910mmになるわけですが、照明の位置も指定してあるので、大工さんが展開図を作って建てたんです。照明器具はネットで探しました。でも、余計なお金はかけていないんですよ。箱形の2階建てがいちばんコストがかからないので、そこに収まるように考えました。1階のギャラリーには、和紙の切り絵で作ったランプシェードを並べる予定。その展示即売をするための空間なんです」と芳子さん。
物静かな夫の久雄さんは設計にはタッチしていないそうで、妻の図面を見て「よく描けるね」と微笑む。
ユニークなのは建物の外観や間取りだけでない。最新のオール電化、外断熱工法、深夜電力で基礎部分を蓄熱体とする暖房システムを採り入れ、外気温でお湯を沸かすエコキュートも導入。田舎にありがちなLPGや石油を一切使わないため、集中管理が可能になるという。林家では2羽のインコと1頭の柴犬も飼っている。コルクタイルの床は天然素材を選んだというだけでなく、ペットの餌やフンが隙間に挟まらないようにするため。そこまで細かく機能を考えているのだ。
埼玉県でマンションの5階に住んでいたご夫妻は、休日になると長野や山梨、那須の名峰を巡っていた。定年後は山の麓で暮らしたいと思っていたが、40代のご主人が会社都合で自由の身となる。奥さんは会社に勤めながらイラストレーターとして活動していたが、どうせ移住するなら体力的にも早いうちがいいだろうと判断。1年前に土地探しを始めた。購入した土地は茶臼岳が間近に望める位置にあり、南西角地で日当たりも良い。隣にリンゴ畑が広がる環境も気に入ったが、「決め手になったのは角にナラの大木があったこと。形が良くて目印になると思った」というから、さすがに芳子さんは目のつけどころが違う。
建物が完成して2カ月。これまでは荷ほどきや室内の整理、玄関前のブロック施工などに精を出してきた。那須の生活を楽しむのはこれからだ。
「2人とも庭いじりが好きだし、畑もこれからやるつもりです。1年後にはランプシェードの展示とトマトの収穫ができていると思いますので、ぜひまた来てくださいね」とご夫妻。1年後に訪ねたら、さらに進化した青写真が描かれているに違いない。
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